カテゴリー: システム開発内製化

  • (6月4日 通信)生成AIでコードが書ける時代に、本当に必要なのは「設計力」である

    生成AIを使えば、以前よりもはるかに速くコードを書けるようになりました。しかし、速くコードが作れることと、安全で保守しやすい業務システムを作れることは、まったく別の話です。@ITの記事では、生成AIを活用した「バイブコーディング」が、脆弱なコードを大量に生み出している現状が紹介されています。

    出典:
    @IT「『バイブコーディングが脆弱なコード量産』99%の組織が直面 レビューや修正リリースを上回るペースで」
    https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2602/05/news035.html

    @ITの記事では、パロアルトネットワークスの調査を基に、生成AIを使ったコード生成が開発現場に急速に広がる一方で、セキュリティレビューや脆弱性修正が追いついていない実態が紹介されています。

    特に重要なのは、生成AIによるコード生成そのものが悪いという話ではない点です。

    問題は、生成AIが出力したコードを、人間側がどのような設計思想で受け止め、確認し、業務システム全体の中に組み込むのかという点にあります。

    生成AIは、コードを書く速度を上げます。

    しかし、設計が曖昧なまま生成AIに指示を出すと、動くけれど意味が整理されていないコード、権限管理が甘いコード、後から修正しづらいコード、業務フローと会計処理のつながりが見えないコードが増えていく危険があります。

    これは中小企業にとって、決して他人事ではありません。

    むしろ、生成AIによって「自社でも業務システムを作れるかもしれない」という可能性が広がった今だからこそ、経営者や社内担当者が最低限のシステム構造を理解しておく必要があります。

    当社の立場:

    当社は、生成AIを否定していません。

    むしろ、生成AIは中小企業にとって大きなチャンスだと考えています。これまで大企業でなければ難しかった業務システムの構築や改善に、中小企業が自ら取り組める時代が来ています。

    しかし、生成AIに丸投げしてよいとは考えていません。

    生成AIでコードは書けます。
    しかし、「動くコード」がそのまま「正しいコード」であるとは限りません。

    業務システムには、業務の流れ、権限、データ構造、会計処理、責任の所在、将来の拡張性といった設計が必要です。ここを整理しないままコードだけを増やしていくと、最初は便利に見えても、後から修正できないシステムになってしまいます。

    特に業務会計システムでは、数字の根拠を説明できることが重要です。

    なぜそのデータが登録されたのか。
    誰が入力したのか。
    どの業務処理と会計処理がつながっているのか。
    どの権限の人が確認し、承認したのか。

    これらを説明できなければ、生成AIで作ったシステムは会社の武器ではなく、将来のリスクになりかねません。

    当社の内製化支援講座では、単にデジタルツールを導入することを目的にしていません。

    中小企業の経営者や社内担当者が、生成AIを安全に活用するために、業務システムの構造を理解し、外部の専門家を正しく使い、自社の業務と会計を説明できる状態を目指します。

    つまり、当社が重視しているのは「AIでコードを書くこと」そのものではありません。

    AIに正しく指示できる設計力。
    AIが出したコードを危険なまま使わない判断力。
    外部エンジニアや専門家に丸投げせず、自社の業務構造を説明できる力。

    ここにこそ、これからの中小企業DXの本質があると考えています。

    まとめ:

    生成AIによって、コードを書くハードルは確実に下がりました。

    しかし、システム開発の本質は、コードを書くことだけではありません。

    何を作るのか。
    なぜ作るのか。
    どの業務とつながるのか。
    誰が責任を持つのか。
    将来どのように保守するのか。

    この設計を持たないまま生成AIを使えば、コードの量だけが増え、会社の中に見えないリスクが蓄積されていきます。

    生成AI時代に必要なのは、AIを恐れることではありません。
    AIに丸投げすることでもありません。

    経営者と社内担当者がシステムの構造を理解し、生成AIを正しく使いこなすことです。

    当社は、そのための内製化支援を行ってまいります。

  • (6月3日通信)自治体DXが「紙と電話」に戻ってしまう理由――中小企業にも共通する、ツール導入より大切なこと

    自治体DXに関する興味深い記事がありました。

    TechTargetジャパンの記事では、自治体で庁内ツールを導入しても、約8割が以前の紙や電話などのアナログな業務手順に戻ってしまっているという問題が紹介されています。

    出典:
    TechTargetジャパン
    「8割がアナログに逆戻り 自治体DXで庁内ツールが定着しない“やっぱりな理由”」
    2026年6月1日公開

    問題は「デジタル化が遅れていること」ではない

    この記事で重要なのは、単に「自治体はデジタル化が遅れている」という話ではないという点です。

    むしろ本質は、どれだけ機能が豊富なツールを導入しても、現場の業務構造や人の動きに合っていなければ、結局は使われなくなるということです。

    これは自治体だけの問題ではありません。

    中小企業の業務システムにも、まったく同じことが起こります。

    • 高機能なシステムを導入した。
    • クラウドサービスを契約した。
    • 生成AIも使えるようにした。
    • 便利なアプリも入れた。

    それでも、現場が紙、電話、Excel、口頭確認に戻ってしまう。

    この原因は、現場の人が悪いのではありません。

    多くの場合、業務の流れそのものが整理されないまま、ツールだけを入れていることに問題があります。

    紙や電話が残る理由を見ないまま、ツールだけ入れても定着しない

    たとえば、次のような業務がなぜ残っているのかを確認する必要があります。

    • 紙の帳票がなぜ使われ続けているのか。
    • 電話確認がなぜなくならないのか。
    • Excelでの二重管理がなぜ残るのか。
    • 担当者しか分からない作業がなぜ放置されているのか。

    これらを確認しないままシステムを導入しても、現場から見れば「仕事が楽になる道具」ではなく、「余計な入力作業が増える道具」になってしまいます。

    機能が豊富なシステムほど、現場では逆効果になることがある

    特に「機能が豊富なシステム」は、一見すると魅力的です。

    しかし、機能が多いということは、画面が複雑になり、判断項目が増え、操作説明も増えるということです。

    現場にとって必要なのは、何でもできるシステムではありません。

    今の業務に対して、何をやめて、何を残し、何を自動化し、どの情報をどこに集めるのかを明確にしたシステムです。

    生成AIも、業務構造が整理されていなければ危険になる

    これは生成AIの活用でも同じです。

    生成AIを導入すれば業務が効率化する、という単純な話ではありません。

    生成AIが正しく働くためには、業務の流れ、判断基準、入力される情報、保存されるデータの意味が整理されている必要があります。

    業務が整理されていない状態で生成AIを使うと、一時的には便利に見えても、後から確認できない情報や、責任の所在が不明な判断が増えてしまう危険があります。

    DXとは、ツール導入ではなく業務の再設計である

    つまり、DXとはツールの導入ではなく、業務の再設計です。

    システムを入れる前に必要なのは、まず自社の業務を言語化することです。

    誰が、いつ、何を見て、何を判断し、どこに記録し、誰が確認するのか。

    この流れを経営者や現場担当者が説明できない状態では、どれだけ優れたシステムを導入しても、結局は紙と電話に戻ってしまいます。

    中小企業にとっての教訓

    自治体DXで起きている問題は、中小企業にとっても非常に重要な教訓です。

    「便利なツールを入れれば解決する」という発想ではなく、「自社の業務構造を理解し、整理し、その上で必要なツールを選ぶ」という順番が必要です。

    これからの時代、中小企業に求められるのは、すべてを自社だけで開発することではありません。

    外部の専門家を使うことも重要です。

    しかし、外部に依頼する場合でも、自社の業務構造をまったく説明できないまま丸投げしてしまうと、結果として現場に定着しないシステムになってしまう可能性があります。

    経営者自身が、業務とシステムの関係を理解する必要がある

    大切なのは、経営者自身が業務とシステムの関係を理解することです。

    プログラムをすべて自分で書く必要はありません。

    しかし、次のようなことを判断できる力は、これからの経営において非常に重要になります。

    • 自社の業務がどのような構造で動いているのか。
    • どこに無駄があるのか。
    • どこをデジタル化すべきなのか。
    • どこは人間の判断を残すべきなのか。

    まとめ

    自治体DXが紙と電話に戻ってしまうという話は、決して他人事ではありません。

    • ツールを導入する前に、業務を整理する。
    • システムを発注する前に、業務の流れを説明できるようにする。
    • 生成AIを使う前に、AIが参照すべき情報の構造を整える。

    この順番を間違えないことが、これからの中小企業のDXにおいて非常に重要だと考えています。

    出典:

    TechTargetジャパン「8割がアナログに逆戻り 自治体DXで庁内ツールが定着しない“やっぱりな理由”」

    2026年6月1日公開