特集【会社の見える化】— 社長視点
「あの案件は何割くらい進んでいる?」と尋ねたとき、「八割です」と返ってきたのに、翌週も八割のまま。そのような経験はないでしょうか。数字が報告されていても、経営判断に使えるとは限りません。
業務の進捗が見えない会社に足りないのは、報告の回数や立派なグラフではなく、仕事の節目と、止まっている理由を共通の言葉で表す仕組みです。
進捗率は、違う仕事を同じ数字に見せてしまう
十個の作業のうち八個が終わったから八割、担当者の感覚でおおよそ八割、予算の八割を使ったから八割。同じ「80%」でも意味は異なります。残った二割が顧客の最終承認や難しい技術検証なら、必要な日数は全体の半分を超えるかもしれません。
また、経営者が本当に知りたいのは、作業量の割合だけではありません。納期に間に合うのか、請求できるのはいつか、どこに支援を加えるべきか、今日決めなければならないことはあるか、という判断材料です。
進捗率だけを集める会議では、数字の根拠を確認するための質問が増えます。結局、担当者から事情を聞かなければ判断できず、「見える化したはずなのに会議が減らない」という結果になります。
割合ではなく、通過した節目を見る
仕事は、意味のある節目に分けると見えやすくなります。たとえば受注から入金までなら、受注確定、条件確認、着手、納品、検収、請求、入金という節目です。各節目には、通過したと判定できる条件と日時を持たせます。
「納品済み」は、担当者が作業を終えた日ではなく、顧客へ成果物を引き渡した日時。「検収済み」は、顧客が条件を満たしたと認めた日時。このように定義すれば、同じ言葉を誰が見ても同じ意味で使えます。
節目を細かくしすぎる必要はありません。経営判断や次の担当者の行動が変わる境界だけを選びます。記録のための記録を増やすと更新されなくなり、情報の鮮度が落ちるからです。
遅れより先に「止まり方」を見えるようにする
期限を過ぎてから赤く表示するだけでは、対応は後手に回ります。進捗を見る画面には、次の節目、その予定日、進められない理由、判断を求める相手、最後に状態が変わった日時が必要です。
- 顧客の回答を待っている
- 社内承認を待っている
- 必要な資料が不足している
- 担当者の作業がまだ終わっていない
- 想定外の問題があり、進め方の判断が必要である
同じ「停止中」でも、誰に働きかけるべきかが違います。理由が見えれば、社長はすべての案件へ一律に催促するのではなく、自分の判断で動く案件、管理者が支援する案件、期日まで待つ案件を分けられます。
更新されていないことも重要な情報である
画面に状態が表示されていても、いつの情報か分からなければ安心できません。三日前の「順調」と、十分前の「順調」は同じ価値ではありません。
最後の更新日時と、通常どれくらいで状態が変わる業務なのかを組み合わせると、情報が古くなった案件を見つけられます。毎日動くはずなのに三日間変化がない案件を、「報告がないから順調」と扱わず、確認対象として浮かび上がらせるのです。
ただし、社員に毎日「変化なし」と入力させるのは本末転倒です。見積書の承認、ファイルの受領、工程の完了といった実際の操作から、自動的に更新日時が残る形が望まれます。
経営画面には、全件ではなく例外を集める
百件の案件を一覧にしても、社長がすべてを読むことはできません。経営画面で優先すべきなのは、予定日を超えた案件、長く変化のない案件、粗利や信用への影響が大きい案件、経営判断を待つ案件です。
現場が見る詳細な仕事一覧と、社長が見る例外一覧は違って構いません。ただし、別々の表へ入力するのではなく、同じ業務記録から作ります。現場が仕事を進めれば、社長の画面も変わる。このつながりがあって初めて、現在を確認するための会議を減らせます。
一つの業務で、五つの項目をそろえる
最初は、納期遅れや確認の多い業務を一つ選び、各案件に「現在の節目」「次の節目」「予定日」「止まっている理由」「最終更新日時」を持たせてください。二週間運用すれば、使われない項目や足りない状態が見えてきます。
進捗を見えるようにする目的は、社員を監視することではありません。遅れが損失になる前に支援を入れ、順調な案件には余計な確認をしないことです。割合ではなく、仕事がどの節目にあり、次へ進む条件が何かを見る。それが経営に使える進捗管理です。


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