カテゴリー: システム開発内製化

  • (6月20日通信)中小企業のシステム開発は、なぜ作り直しになりやすいのか

    コストを抑えながら、あとで守れる構造にしておくという考え方

    中小企業が業務システムを導入するとき、最初から大企業並みのシステムを作ることは現実的ではありません。

    予算には限りがあります。
    人員にも限りがあります。
    システム担当者が社内にいないことも珍しくありません。

    そのため、中小企業向けのシステム開発では、どうしても「まず動くものを作る」ことが優先されがちです。

    それ自体が悪いわけではありません。

    最初から高額なシステムを作ろうとして、導入前に止まってしまうより、まず小さく始めることには大きな意味があります。

    しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

    それは、コストを抑えることと、将来の安全性や拡張性を捨てることは同じではないということです。

    一般的なシステム開発会社では、大企業向けシステムと中小企業向けシステムでは、最初の設計が違う

    大企業向けのシステムであれば、最初からセキュリティ、権限管理、監査ログ、内部統制、運用体制、障害対応、外部監査への対応まで含めて設計されることが多くなります。

    誰が入力できるのか。
    誰が承認できるのか。
    誰が閲覧できるのか。
    誰がデータを変更したのか。
    変更履歴は残るのか。
    部署ごとにアクセス範囲を分けられるのか。
    外部の専門家が確認できるのか。
    不正や誤操作があったときに追跡できるのか。

    こうしたことを、かなり早い段階から考えます。

    一方で、中小企業向けのシステムでは、予算の都合もあり、そこまで重い設計を最初から入れないことがあります。

    これも現実的な判断ではあります。

    問題は、最初にすべてを実装しないことではありません。

    問題は、あとから強化できる構造にしていないことです。

    「あとで考えればいい」が、あとで高くつく

    業務システムを作るときに、よくある考え方があります。

    今は小さい会社だから、権限管理は簡単でいい。
    今は人数が少ないから、誰でも同じ画面でいい。
    今は問題が起きていないから、監査ログはいらない。
    今は社長が全部見ているから、承認フローはいらない。
    今は外部監査もないから、記録は最低限でいい。

    たしかに、現在だけを見るなら、それで動くかもしれません。

    しかし会社は成長します。

    社員が増える。
    部署が増える。
    拠点が増える。
    取引先が増える。
    扱う金額が大きくなる。
    外部専門家が関わる。
    金融機関への説明が必要になる。
    補助金や助成金、許認可、入札が関係してくる。
    税務調査や内部確認に耐える必要が出てくる。

    そのときに、最初のシステムが「とりあえず動く」だけの構造で作られていると、あとから守りを強くできません。

    権限管理を後付けしようとしても、データ構造が対応していない。
    監査ログを残そうとしても、誰が何をしたかを記録する前提がない。
    部署別に分けようとしても、部署という考え方がデータに存在しない。
    承認フローを追加しようとしても、入力と確定の区別がない。
    会計データと業務データをつなげようとしても、取引の意味が整理されていない。

    こうなると、部分的な改修では済まなくなります。

    結局、作り直しになるのです。

    安く作ることが悪いのではない

    ここで誤解してはいけないのは、安く作ること自体が悪いわけではないということです。

    中小企業が最初から大規模なシステム投資をするのは難しい。
    だから、小さく始めることは大切です。

    問題は、安く作ることではありません。

    問題は、あとから守れない構造で作ってしまうことです。

    最初は簡単な画面でよい。
    最初は機能を絞ってよい。
    最初は一部の業務だけでよい。
    最初は社内の少人数だけで使ってよい。

    しかし、その裏側にあるデータ構造や責任の分け方まで場当たり的にしてしまうと、会社が成長したときに困ります。

    本当に重要なのは、最初から全部を作ることではありません。

    あとから増やせる場所を残しておくことです。

    後でセキュリティを高めやすい構造とは何か

    では、後でセキュリティを高めやすい構造とは何でしょうか。

    たとえば、最初から次のような考え方を持っておくことです。

    誰が入力したのかを記録できる。
    誰が確認したのかを分けられる。
    誰が承認したのかを残せる。
    誰が閲覧できるのかを後から制御できる。
    部署や拠点が増えても紐づけられる。
    取引データに作成日時や更新日時を残せる。
    将来、監査ログを追加できる。
    外部専門家が確認できる出口を作れる。
    業務データと会計データの関係を説明できる。
    生成AIにシステム全体の意味を説明しやすい構造にしておく。

    最初からすべてを画面に出す必要はありません。
    最初からすべてを運用する必要もありません。

    しかし、将来必要になったときに追加できるように、考え方だけは最初から持っておく必要があります。

    これは、家を建てるときに似ています。

    最初からすべての部屋に高級設備を入れる必要はありません。
    しかし、あとから増築できない基礎で建ててしまうと、将来困ります。

    業務システムも同じです。

    最初から大企業仕様にする必要はありません。
    しかし、会社が成長したときに守れる骨格は必要です。

    中小企業だからこそ、設計が必要になる

    「うちはまだ小さい会社だから、そこまで考えなくていい」

    そう思う経営者もいるかもしれません。

    しかし、むしろ中小企業だからこそ、最初の設計が重要です。

    大企業であれば、後から専門部署や大きな予算で修正できるかもしれません。
    しかし中小企業では、一度作ったシステムを作り直す負担は非常に大きいものになります。

    業務が止まる。
    社員が混乱する。
    データ移行が必要になる。
    外部業者とのやり取りが増える。
    追加費用が発生する。
    以前のシステムで積み上げた情報を引き継げないこともある。

    これは大きな損失です。

    だからこそ、中小企業は最初から完璧なシステムを作る必要はありませんが、成長したときに作り直しになりにくい考え方を持っておく必要があります。

    外注するにしても、会社側に判断軸が必要

    業務システムをすべて自社で作る必要はありません。

    システム開発会社、外部エンジニア、税理士、社会保険労務士、データベース専門家、セキュリティ担当、インフラ担当、デザイナーなど、専門家を活用することはとても重要です。

    ただし、専門家を活用することと、丸投げすることは違います。

    会社側が何も分からないまま発注すると、どうしても「今の予算で動くもの」に寄りやすくなります。

    しかし、経営者が少しでも設計の視点を持っていれば、発注時に確認できます。

    このシステムは、あとから権限管理を強化できますか。
    部署が増えたときに対応できますか。
    誰が入力・承認・変更したかを残せますか。
    会計データと業務データのつながりを説明できますか。
    外部専門家に確認してもらうための出力はできますか。
    将来、セキュリティを高める余地はありますか。

    このような質問ができるだけで、発注の質は大きく変わります。

    失敗例を知ることは、未来の損失を減らすこと

    システム開発の失敗例を知ることは、決して後ろ向きなことではありません。

    むしろ、経営者にとっては重要な学習です。

    なぜ作り直しになったのか。
    なぜ権限管理を後付けできなかったのか。
    なぜ部署が増えたときに破綻したのか。
    なぜ会計データと業務データがつながらなかったのか。
    なぜ外部業者に依存しすぎてしまったのか。
    なぜ生成AIで作った便利ツールが、会社の基幹業務に使えなかったのか。

    失敗例には、発注前に知っておくべき視点が詰まっています。

    成功事例だけを見ると、簡単そうに見えます。
    しかし、失敗例を見ると、どこを避けるべきかが分かります。

    中小企業の経営者にとって大事なのは、システムの細かな技術をすべて理解することではありません。

    失敗しやすい構造を見抜くことです。

    最初から高額にするのではなく、後で守れるように始める

    中小企業のシステム開発で大切なのは、最初から大企業並みの高額なシステムを導入することではありません。

    大切なのは、コストを抑えながらも、後でセキュリティを高めやすい構造にしておくことです。

    小さく始める。
    しかし、場当たり的には作らない。

    機能を絞る。
    しかし、将来の拡張余地は残す。

    今の予算に合わせる。
    しかし、会社の成長を邪魔しない骨格にする。

    これが、中小企業にとって現実的なシステム設計ではないでしょうか。

    業務システムは、単なる便利ツールではありません。
    会社の業務を記録し、会計につなげ、信用を支え、経営判断の材料になるものです。

    だからこそ、最初に考えるべきことは「どれだけ多機能にするか」ではありません。

    あとから会社を守れる構造になっているか。

    そこを見落とさないことが、中小企業のシステム開発で失敗を避ける第一歩だと思います。

  • (6月19日通信)オフィスのクラウド化とは何か

    事務所経費を抑えながら、会社の動き方を軽くするDX

    DXという言葉を聞くと、多くの方は「高額なシステムを導入すること」「AIや最新ツールを使うこと」「大企業が行う大規模なデジタル改革」をイメージされるかもしれません。

    しかし、中小企業にとって本当に重要なDXは、もっと身近なところから始まります。

    それが、オフィスのクラウド化です。

    ここでいうオフィスのクラウド化とは、単に紙の書類をPDFにすることや、チャットツールを導入することだけではありません。

    事務所に人が集まらなければ進まない仕事。
    特定の担当者の机の上にしか情報がない仕事。
    電話や紙や口頭確認が前提になっている仕事。
    外部の専門家に依頼した内容が、社内に知識として残らない仕事。

    こうした会社の動き方そのものを見直し、必要な情報・人材・教育・業務管理をクラウド上で扱えるようにしていくことです。

    DXは、事務所を大きくすることではない

    昔ながらの会社運営では、事業を大きくしようとすると、事務所を広げ、人を常駐させ、設備を増やし、固定費を増やす必要がありました。

    もちろん、業種によっては現場や拠点が必要です。

    しかし、すべての業務を事務所に集める必要があるかといえば、そうではありません。

    たとえば、次のような業務はクラウド化しやすい領域です。

    ・日程調整
    ・講座や研修の案内
    ・資料共有
    ・顧客別の情報管理
    ・在宅ワーカーとの連絡
    ・外部専門家との打ち合わせ
    ・業務マニュアルの共有
    ・簡単な進捗管理
    ・問い合わせ対応の整理
    ・講座後のフォロー

    これらをクラウド上で管理できるようになると、事務所に常駐する人数を増やさなくても、事業を回しやすくなります。

    つまり、オフィスのクラウド化とは、単なるIT化ではなく、会社の固定費を増やさずに、事業運営の幅を広げるための考え方です。

    外部人材の活用も、オフィスのクラウド化の一部

    オフィスのクラウド化を考えるうえで重要なのが、外部人材の活用です。

    中小企業がすべての専門性を社内に抱え込むのは、現実的ではありません。

    IT、会計、労務、デザイン、文章作成、講座運営、顧客対応、システム設計。
    必要な専門性は多岐にわたります。

    だからこそ、これからの会社運営では、必要な専門性を持つ外部人材と連携しながら、クラウド上で仕事を進めていく考え方が重要になります。

    ただし、ここで大切なのは「丸投げ」ではありません。

    外部人材を活用しながらも、会社側に判断軸や業務理解を残すことです。

    外部に依頼した結果、社内に何も残らない。
    担当者が変わると何も分からなくなる。
    システム会社や外部業者に聞かないと、自社の業務が説明できない。

    この状態では、本当の意味でのDXとは言えません。

    内製化とは、すべてを自社だけで行うことではありません。
    外部人材を上手に活用しながら、会社側が自社の業務を理解し、判断できる状態を作ることです。

    オフィスのクラウド化で変わること

    オフィスのクラウド化が進むと、会社の運営は大きく変わります。

    まず、情報が一か所に閉じ込められにくくなります。

    紙の資料、個人のパソコン、担当者の記憶、口頭だけの引き継ぎ。
    こうした属人的な管理から、クラウド上で共有できる情報管理へ移行することで、業務の見通しが良くなります。

    次に、場所に縛られにくくなります。

    事務所にいなければ確認できない。
    特定の人が出社しなければ進まない。
    紙の資料が手元にないと判断できない。

    このような制約が減ることで、在宅ワーカーや外部専門家との連携もしやすくなります。

    さらに、教育や引き継ぎも変わります。

    一度説明した内容を資料化し、共有ページやマニュアルとして残しておけば、同じ説明を何度も繰り返す必要がなくなります。

    これは、単なる業務効率化ではありません。

    会社の知識を、個人の頭の中から会社の資産へ移していく作業です。

    ただし、ツールを入れるだけでは失敗する

    オフィスのクラウド化というと、すぐにクラウドツールやAIツールを導入したくなるかもしれません。

    しかし、ツール導入だけを急ぐと失敗します。

    なぜなら、業務の整理ができていない状態でツールを入れても、混乱がクラウド上に移動するだけだからです。

    紙で混乱していたものが、スプレッドシートで混乱する。
    口頭で曖昧だったものが、チャットで曖昧になる。
    担当者しか分からなかった業務が、クラウド上でも担当者しか分からないままになる。

    これでは、本質的な改善にはなりません。

    大切なのは、ツールを導入する前に、業務の流れを整理することです。

    誰が、何を、どのタイミングで確認するのか。
    どの情報を、どこに保存するのか。
    どこまでを社内で行い、どこから外部人材に依頼するのか。
    最終的な判断は誰が行うのか。
    後から見返したときに、経緯が分かる状態になっているか。

    こうした設計があって、はじめてクラウドツールは力を発揮します。

    雲楼システムパートナーズが考えるDX

    雲楼システムパートナーズでは、DXを単なるデジタルツールの導入とは考えていません。

    DXとは、会社の業務、人材、情報、教育、外部専門家との関係を整理し、会社がより軽く、より判断しやすく動けるようにすることだと考えています。

    その一つの形が、オフィスのクラウド化です。

    事務所を大きくする前に、情報共有の仕組みを整える。
    常勤人員を増やす前に、在宅ワーカーや外部専門家との連携方法を整える。
    高額なシステムを導入する前に、自社の業務構造を整理する。
    AIを活用する前に、AIに何を任せ、何を人間が判断するのかを考える。

    この順番を間違えないことが重要です。

    中小企業こそ、オフィスのクラウド化から始めるべき

    中小企業にとって、固定費の増加は大きなリスクです。

    事務所経費、人件費、設備費、管理コスト。
    これらを一度増やすと、簡単には減らせません。

    だからこそ、これからの中小企業は、事業を大きくする前に、会社の動き方を軽くする必要があります。

    オフィスのクラウド化は、そのための現実的な第一歩です。

    いきなり大規模なシステム開発を行う必要はありません。
    いきなりAIを使いこなす必要もありません。
    まずは、自社の業務を整理し、情報共有の形を見直し、外部人材を活用しやすい体制を作ることです。

    それだけでも、会社の動き方は大きく変わります。

    まとめ

    オフィスのクラウド化とは、単なる在宅勤務やクラウドツールの導入ではありません。

    事務所に依存していた機能を整理し、情報・教育・人材活用・業務管理をクラウド上で扱えるようにすることです。

    これにより、事務所経費や固定人件費を抑えながら、必要な専門性を必要なタイミングで活用しやすくなります。

    中小企業にとってのDXは、大企業の真似をすることではありません。

    自社の規模に合った形で、会社の動き方を軽くし、判断しやすくし、外部専門家を活用しながらも自社に知識を残していくことです。

    オフィスのクラウド化は、そのための分かりやすく、現実的な入口になります。

    雲楼システムパートナーズでは、生成AI時代における業務改善やシステム内製化について、無料講座を通じて分かりやすくお伝えしています。

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