(6月7日通信)システム開発の内製化は「スピードとコスト」だけで語ってよいのか

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先日、システム開発の内製化について解説された動画を視聴しました。

参考動画:
Why is in-house system development necessary now …
https://www.youtube.com/watch?v=xcwL6vudJRo

動画では、これからの企業にとってシステム開発の内製化が重要であることが語られていました。
その方向性自体には、当社も大きく賛成です。

外部にすべてを任せていると、業務改善のスピードが落ちます。
小さな修正にも時間と費用がかかり、現場の変化にすぐ対応できません。
その意味で、社内でシステムを改善できる力を持つことは、これからの中小企業にとって非常に重要です。

ただし、当社としては、そこだけで内製化を語るのは少し危ういと考えています。

動画の印象としては、内製化の必要性を「スピード」と「コスト」の面から説明し、その解決策としてローコードやノーコードの活用も有効である、という方向に話が進んでいるように感じました。

もちろん、ローコードやノーコードが悪いわけではありません。
簡易的な業務改善、社内アンケート、集計補助、ちょっとした管理ツールなどであれば、有効に使える場面は多くあります。

しかし、会社の基幹業務、会計、在庫、販売、顧客管理、権限管理、承認フローに関わるシステムまで、単に「早く安く作れるから」という理由で扱ってよいのでしょうか。

当社の答えは、明確に「慎重であるべき」です。

システムは会社の頭脳である

当社は、業務システムや会計システムを、単なる便利ツールとは考えていません。

システムは会社の頭脳です。

会社のシステムには、次のような情報が組み込まれています。

誰が何を承認するのか。
どの業務をどの順番で処理するのか。
どのデータを経営判断に使うのか。
売上、仕入、在庫、入金、支払、会計処理がどのようにつながっているのか。
どの情報を誰が見てよいのか。
どこから先は責任者の判断が必要なのか。

これらは、会社の認知、記憶、判断、反射神経にあたる部分です。

つまり、システムを理解していない経営者は、会社の頭脳の構造を理解していない状態に近いのです。

この状態で「システムは外部に任せています」「ローコードで現場が作っています」「担当者に聞かないと分かりません」となっているなら、それは経営者が会社の判断構造を自分で説明できないということです。

これは非常に危険です。

内製化とは、社員が勝手にツールを作ることではない

当社が考える内製化は、社員が自由にローコードツールや生成AIを使って、思いつきでアプリを量産することではありません。

むしろ、それは危険な内製化です。

設計のないまま業務アプリが増えると、同じ意味のデータが複数箇所に分散します。
どの情報が正しいのか分からなくなります。
部署ごとに似たようなツールが作られ、やがて会社全体のデータ構造が蜘蛛の巣のようになります。

最初は便利に見えても、後から会計、在庫、顧客情報、権限管理とつなごうとしたときに、収拾がつかなくなる可能性があります。

生成AI時代には、この危険性はさらに高まります。

なぜなら、生成AIは非常に速くコードを書けるからです。
しかし、設計が曖昧なまま生成AIを使うと、間違った構造のコードも非常に速く増えてしまいます。

「動くもの」は作れます。
しかし、「会社の将来に耐える構造」になっているとは限りません。

経営者が全体像を把握することが本質である

当社が考える内製化の本質は、開発作業をすべて社内で行うことではありません。

本質は、経営者が自社の業務構造、会計構造、データ構造、権限構造を説明できる状態を作ることです。

プログラムを書く部分は、外部の専門家に依頼してもかまいません。
インフラ、セキュリティ、フロントエンド、データベース、法務、税務など、高度な専門領域は外部のプロを使うべきです。

しかし、何を作るのか。
なぜ作るのか。
どの業務をどのデータとして残すのか。
どの会計処理につながるのか。
どの権限で誰が操作するのか。
将来、どの方向に拡張するのか。

これを外部に丸投げしてはいけません。

ここを経営者が握っていなければ、会社は自分で判断しているように見えて、実際には既存システムや外部ベンダーの都合に判断を誘導されてしまいます。

言い換えれば、会社の頭脳を他者に預けたまま、自分ではその思考回路を説明できない状態です。

人材の維持と育成を忘れてはいけない

内製化を語るとき、スピードやコストはよく語られます。

しかし、当社はもう一つ重要な論点があると考えています。

それは、人材の維持と育成です。

システムを完全に外部任せにすると、社内に業務知識とシステム知識をつなぐ人材が育ちません。
逆に、現場任せでローコードツールだけを広げても、属人化した小さなツールが増えるだけで、会社全体の設計知は蓄積されにくくなります。

必要なのは、業務を理解し、会計を理解し、システムの構造もある程度説明できる人材です。

中小企業にとって、そのような人材は非常に貴重です。
そして、その人材は一朝一夕には育ちません。

だからこそ、内製化支援は単なるツール導入ではなく、会社の中に「業務を構造として理解する人材」を育てる取り組みでなければなりません。

ローコードは入口であって、基幹システムの設計そのものではない

ローコードやノーコードは、現場の課題を見える化する入口としては有効です。

社員が自分たちの業務を整理し、試作品を作り、何が必要なのかを考えるきっかけになります。

しかし、会社の中核に関わる業務システムや会計システムは、最終的には設計された構造として整理する必要があります。

当社は、重要な業務システムについては、PythonやDjangoのようなコードとして構造化できる技術を重視しています。

なぜなら、コードには設計意図を残せるからです。
データモデル、業務フロー、権限、会計処理、コメント、辞書、命名規則を通じて、会社の考え方を構造として残すことができます。

これは、単なる画面作成ツールでは得にくい価値です。

当社が考える内製化支援

当社の内製化支援は、単に「システムを安く早く作りましょう」というものではありません。

当社が目指すのは、経営者が自社のシステム構造を理解し、外部専門家を正しく使い、社内に設計知を残せる状態を作ることです。

そのために、次のような考え方を重視します。

業務を画面ではなく、データ構造として見ること。
会計処理と業務イベントを切り離さずに考えること。
権限と責任の所在を明確にすること。
外部専門家に任せる部分と、社内で握る部分を分けること。
生成AIが読み取れる形で、設計意図をコードや文書に残すこと。
経営者自身が、会社のシステム全体像を説明できるようにすること。

内製化とは、社員が何でも作れるようになることではありません。
経営者が、会社の頭脳であるシステムの構造を理解し、会社の主導権を取り戻すことです。

まとめ

システム開発の内製化は、これからの中小企業にとって重要なテーマです。

ただし、それをスピードとコストだけで語ると、ローコードやノーコードを導入すればよい、という話に流れやすくなります。

当社は、そこに強い危機感を持っています。

本当に重要なのは、経営者が会社の業務、会計、データ、権限、システムの全体像を理解することです。

システムは会社の頭脳です。
その頭脳の構造を経営者が説明できない会社は、自分で経営しているように見えて、実際には既存システムや外部依存に判断を縛られている可能性があります。

だからこそ、当社は内製化を単なる開発手法ではなく、経営の主導権を取り戻すための取り組みとして位置づけています。

参考リンク:

動画:Why is in-house system development necessary now …
https://www.youtube.com/watch?v=xcwL6vudJRo

経済産業省:DXレポート サマリー
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_01.pdf

経済産業省:DXレポート 本文
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf

参考記事:DXの内製化は必要?重要視される理由からメリット・課題
https://www.nomura-system.co.jp/contents/dx-inhouse/

参考記事:ユーザー企業がシステム内製化を進めるべき業務とは?
https://www.linpress.co.jp/blog/33

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